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雇用と給料の二面性 ── 労働者篇

給料が安いのはあんたのせい。能力次第で会社を選べる自由と、規則に守られた休み ── 労働者として働くことのメリットとデメリットを、雇われる側の論理で描く。

連載 2/4。1/4 背景篇 の続きです。

私達がどれぐらい働くかで、生活が豊かになったり、税収が増えて公共サービスが充実するかをみてきました。

つまり「生活に不満があるなら自分が稼げ」ということです。行政のサービスも私達の税収次第なのですから。

というわけで今回と次回は、労働者として働くことと経営者として働くことの二面性を紹介します。雇用されるか雇用するかの違いです。

1. 労働者のデメリット

雇用される労働者の特徴はなんでしょうか。一番は経営者に給料を決められてしまうこと です。

アメリカと日本の平均賃金推移(1990–2014)

出典: Average wages 1990 to 2014 – OECD Data

ここ 20 年間のアメリカと日本の平均賃金を比べると伸びが全然違います。

国別の製造業の賃金

出典: 世界経済の潮流 – 内閣府

国別の製造業の賃金。日本もアメリカも最近伸びてきています。

給料は「能力」で決まる

その給料はどうやって決まるのでしょうか。色んな要素があると思いますが、大きいのは 「なにができるのか」という「能力」 です。どの業界で働けるのか、外資で働けるのか、大手で管理職として働けるのか、みんなとコミュニケーションとれるのか、こういったことも能力のうちに入ります。

採用選考時に重視する要素

出典: 採用選考時に重視する要素

企業にとって重要な能力にコミュニケーション能力がずっと入っています。

出身学部別の給与格差

出典:「“理系 vs 文系”出身学部で比較!ホントの給与格差」(リクナビ NEXT)

理系の方が給料が高いことが多いとされています。

能力は陳腐化しうる

ただ同じ能力が常に必要とされるわけではありません。その能力を鍛える 専門学校やネット講座 ができて、できるようになる人が増えると給料は安くなってしまいます。例えば工場の梱包作業は誰でもできるので時給はそんなに高くありません。

e ラーニング市場規模の推移

出典: 矢野経済研究所の調べ

e ラーニングの市場規模をみると増加傾向にあります。

さらに その能力が機械によって代替されることもありえます。機械ができるようになってしまえば、経営者からすればその機械を買うだけです。逆にいえば機械を作る仕事をするのも労働価値としては高いです。

自動化による米国雇用の代替リスク

出典: Job Automation May Threaten Half of U.S. Workforce

自動化によってアメリカの仕事の約半分がなくなるかもしれない、とされています。

副業と国際競争

また、能力があって会社の制度さえ整っていれば 副業 によって稼ぐことができます。今やインターネットの発展でクラウドソーシングが可能となり、世界中のすべての人が競争相手となりつつあります。

アフリカの労働人口推移

出典: 世界経済の潮流 – 内閣府

アフリカの労働人口がどんどん増えており、アフリカ人デザイナーが活躍することもありうるとされます。

性別や年齢、ブラック企業の問題

それから一方で、国ごとの文化によっては女性の給料を安く決められてしまったり、年齢が高ければ給料が高くなったりします。女性でも若くても能力があれば給料が高くなる会社ももちろんありますが。

男女間の賃金差(国別比較)

出典: Gender wage gap 1990 to 2014 – OECD Data

男女間の賃金差は国ごとに違い、日本はアメリカよりも差があるとされています。

ブラック企業や職場いじめ の会社にとどまってしまうのも能力が低いからです。別の会社で働ける能力があるのなら転職すればいいだけですが、別の会社で働く能力がないならその会社にとどまるしかありません。

2. 労働者のメリット

給料が決められてしまう一方で、メリットもいくつかあります。給料は能力次第なので、逆に考えると 能力さえあればどんな会社でも選ぶことができます。それに 最低でも頼まれた仕事をこなせば給料をもらえる ので多分野にわたって能力を持つ必要がありません。

上場会社数の推移

出典: 上場会社数・上場株式数

上場している会社だけで数えても 3000 社も存在します。

休む権利が制度で守られている

また、経営者と違って四六時中会社のことを考える必要がない ので、ちゃんと休む時間が規則の中で決められています。もちろん土日ふくめて四六時中会社のことを考えて会社に貢献する社員もいますが、責任の重さとして社員の絶対条件ではありません。

週休 2 日制の労働者の割合(40 年推移)

出典: 日本人の余暇時間、長期的な視点から

週休 2 日制の労働者の割合はこの 40 年間で大幅に増えたとされています。

労働者のまとめ

このように給料を決められてしまう代わりに、能力さえあれば会社を選んで給料をある一定額まで引き上げることはできるし、会社や社会の規則や制度に守られています。

「給料が安いのはあんたのせい」という言葉は厳しく聞こえます。しかし、能力で会社を選び、制度に守られて休めるという立場の自由は、雇われる側ならではのものです。

ただし、これは「労働者は能力で評価され、能力があれば会社を選べる」という前提があってこその話です。その前提を反対側から見ると、何が起こるか ──


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