自動化と仕事の二面性 ── メリット篇
仕事は手放してよい負担で、幸せは働かない中にある。生産性、企業利益、自動運転、スマート農業 ── 自動化を推進する側の論理を、データと共に描く。
連載 2/4。1/4 背景篇 の続きです。
「仕事はできればやりたくないもので、幸せは働かない中にある」── この前提から見ると、仕事の自動化 には人間の生活を解放するための大きなメリットがあります。
簡単に言えば、農業(食べるものの用意)から家事、移動まで様々なことを機械に任せ、人間は人件費から解放されたサービスを安く使い、好きなことに時間を使う ── これが賛成派の描く道です。ロボットの能力が上がり、値段が下がれば、全ての人がロボットに囲まれて生活することも可能性としてはあり得ます。
食卓と住まいを「働かずに」確保する
メリットとしてまず大きいのは、人件費分のお金を払わなくて済む ことです。製品やサービスがとても効率的になったり、安価になったりします。
例えば食糧を確保するためのお金を確保する目的での仕事が、必要なくなる可能性があります。自動で生産された食糧で住む場所も確保できるなら、家賃を確保するための仕事も必要なくなるでしょう。
「働くために食べる、食べるために働く」というループそのものを、自動化は解きほぐす方向に動きます。
人工知能とビッグデータが「人間にしかできない」を狭める

出典: 「ビッグデータ・人工知能がもたらす経済社会の変革」経済産業省政策局
人工知能やビッグデータは、医療・物流・金融・行政まで、ほぼあらゆる分野での応用が期待されています。「人間にしかできない」とされてきた領域は、年々少しずつ狭まっているとされます。

出典: 書籍「機械と競争」
アメリカでは、自動化と IT 投資が進んだ結果として 生産性の伸びは加速 しています。少ない人手でより多くを生み出せるようになっている、ということです。

出典: 書籍「機械と競争」
それと連動して、アメリカ企業の税引き後利益も上昇傾向にあります。経済全体としては、自動化のリターンは確かに発生しているとされます。
自動運転とスマート農業 ── 衣食住と移動の自動化

出典: Google Self-Driving Car Project Monthly Report
Google は 運転手を必要としない車 の開発を進めています。移動の自動化は、運転労働そのものを置き換えるだけでなく、車内の時間の使い方をまるごと組み替える可能性があります。
スマートアグリの名前で、農業のデジタル化・自動化を進める取り組みも各国で始まっています(出典: JFE Engineering Corporation Smart-agriculture Production plant)。食糧生産 という最も基礎的な仕事こそ、自動化との相性が高いとも言えます。
ヒューマンエラーが消える ── 飛行機事故の数字が示すもの
さらに、今までヒューマンエラー(人為的過誤や失敗)で発生していた問題を、機械の支援によって大きく改善することができます。
例えば、1962 年から 71 年までの 10 年間、アメリカの民間旅客機に搭乗した 13 億人のうち亡くなったのは 1,696 名で、100 万人のうち 133 名にものぼりました。これに対して、2002 年から 11 年までの 10 年間 に搭乗した 70 億人以上のうち、事故で亡くなったのはわずか 153 名で、100 万人に 2 名となりました。
約 60 倍 の安全性向上です。自動化・コンピュータ化された運航システムの普及が、この差の大きな要因とされます。命を救う方向にも、自動化は強烈に効きます。
賛成派のまとめ
「仕事は手放してよい負担、幸せは働かない中にある」という前提に立つなら、自動化のメリットは大きく現れます。
- 人件費の重みから解放され、製品とサービスが安くなる
- 食糧・住居・移動という基礎的な仕事を機械に渡せる
- 生産性が伸び、企業の利益も実際に増えている
- ヒューマンエラーが減り、命を救う方向にも効く
- 残った時間は、好きなこと・創造的なことに使える
ただしこれは、「仕事はやりたくない負担だ」という前提があってこその話です。その前提が崩れたとき、機械はまったく違う顔を見せ始めます。
→ 次の 3/4: デメリット篇 ── 働かない貧困と能力の衰え → 連載目次: 1/4 背景篇 ・ 4/4 まとめ篇