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自動化と仕事の二面性 ── 背景篇

ロボット、人工知能、IoT が仕事を奪うのか、解放するのか。インターネット普及、産業用ロボット供給、AI 業界マップ、ドローン市場のデータで現状を整理する 4 部連載の序章。

これは特定の立場を支持・非難する目的ではなく、自動化を歓迎する側と懸念する側それぞれの論理と倫理を独立した記事として描き、両側の視点を提示するための作品です。

人工知能、ロボット、ビッグデータ、IoT、ディープラーニング ── さまざまな物事から機械がデータを取得し、それが機械のシステムの改善に活かされています。

その活かし方として特に大きいのは 2 つあります。1 つ目は「選択の仕方」、そして 2 つ目が今回扱う 自動化と仕事の二面性 です。本連載は全 4 回でこのテーマを見ていきます。

自動化を支える土台 ── まず現状を確認する

ロボットやソフトウェアが仕事を担うためには、その手前にいくつもの技術が積み上がっています。インターネット、産業用ロボットの普及、人工知能の応用領域、ドローン市場 ── どれもこの 10 年で急速に伸びています。

インターネット普及率(国別ユーザー数)

出典: List of countries by number of Internet users

ロボットのプログラムを開発したり、機械同士を繋いで学習させたりするのに、インターネットの普及は欠かせない土台です。世界のユーザー数はもう数十億人に達しています。

産業用ロボットの世界の年間供給量

出典: Industrial Robot Statistics — World Robotics 2015 Industrial Robots

産業用ロボットの世界年間供給量は右肩上がりです。工場の中だけを見ても、人間が担っていた組立・搬送・検査の比重がじわじわと機械側に移っているとされます。

国別の1万人の労働者に対するロボットの数

出典: WORLDLIST — 10 Countries With Most Robot Density

国別に「労働者 1 万人あたりのロボット台数」を見ると、ロボット密度の高い国と低い国の差は 約 5〜6 倍 にもなります。自動化の恩恵は、すでに国ごとに不均等に分配されつつあります。

人工知能とドローン ── 自動化が広がるフロンティア

工場の中だけでは終わりません。人工知能は意思決定や認知の領域へ、ドローンは物流や監視の領域へと自動化を広げています。

人工知能関連の業界マップ

出典: The Current State of Machine Intelligence

人工知能関連のスタートアップ・サービスは、業界横断のマップとして整理しきれないほどに増えています。自然言語処理・画像認識・意思決定支援・自動運転 ── 仕事の中で「人間がやらなくてもよくなるかもしれない部分」が、年々静かに増えていきます。

軍事用・民間用のドローン市場推移

出典: THE DRONES REPORT — Market forecasts, regulatory barriers, top vendors, and leading commercial applications

ドローン市場は民間用・軍事用ともに伸び続ける見通しです。配送・農業・測量・警備のような、これまで人間の体が必要だった仕事にも、機械の選択肢が現れています。

自動化・ロボット化の市場はどんどん盛り上がっている

ここまで進められるのはもちろん、そこから得られるメリットがあるからです。生産性が上がる、人為的なミスが減る、危険な作業から人を引き剥がせる ── 賛成派にとっては理想郷の入り口に見えるでしょう。

しかし一方で、あまり表には出てこないデメリットもあります。仕事の総量が減る、所得が伸びない、人間の能力そのものが衰える ── 反対派にとっては別の景色が見えます。

整理すると、自動化が進んだ社会で人間がとりうる立場は、大きく次の 3 つに集約されます。

  1. すべてロボットに任せて好きなことをする
  2. ロボットを買うためのお金はないし、お金をもらうための仕事もない
  3. ロボットができる仕事は任せて、新しい仕事を作っていく

1 つ目に対応するのが賛成派(メリット篇)、2 つ目に対応するのが反対派(デメリット篇)、3 つ目に当たるのがまとめ篇で扱う中間の道です。

二面性の核心にある問い

連載全体で行き来する核心の問いはこれです。

仕事とは、できれば手放したい負担なのか。それとも、人間が幸福を感じる源そのものなのか。

賛成派は「仕事はできればやりたくないもので、幸せは働かない中にある」と前提を置きます。 反対派は「働く中に幸せがある」と前提を置きます。

このどちらが「正しい」かは、データだけでは決められません。しかしどちらの前提を取るかで、自動化された未来の見え方は大きく変わります。

次の 2 回では、賛成派の世界と反対派の世界を、それぞれ独立した記事として書きます。


→ 次の 2/4: メリット篇 ── 働かない幸福と機械の生産性