自動化と仕事の二面性 ── まとめ篇
すべて任せるか、対抗するか、ではない第 3 の道。ロボットができる仕事は任せて、新しい仕事を作る。職人・新ホワイトカラー・アシスタント・バトルロワイヤルの 4 象限まで整理する最終回。
背景篇、メリット篇、デメリット篇 と読み進めていただいた最終回です。最後に、賛成派と反対派の中間、そしてその限界についてまとめます。
第 3 の道 ── ロボットができる仕事は任せて、新しい仕事を作っていく
背景篇 で示した 3 つの選択肢のうち、3 つ目の道についてここで詳しく見ます。
簡単に言えば、ロボットができる仕事は任せて、ロボットがまだできない仕事や、新しく生まれた仕事を人間が担う ── これが第 3 の道です。賛成派の「すべて任せて好きなことをする」と、反対派の「自動化に対抗して仕事を守る」の間に、グレーゾーンを置く道とも言えます。
いきなりすべての仕事をロボットがやったり、すべての人が貧困に陥ったりするというのは極端な話です。あくまでそういう方向性だということですが、ロボットによる自動化がしやすい仕事としにくい仕事があり、業界ごとにも濃淡があります。
職種を 4 象限で見る ── 自分はどこに立つか
書籍「あと 20 年でなくなる 50 の仕事」では、自動化との関係で職種を 4 つの象限 に分けて整理しています。
1. 職人的世界 常に変化する状況に対応したり、人間の感情や人ゆえのゆらぎに価値のある世界。一品一様で、機械が学習する繰り返しが取りにくい領域です。
2. 新ホワイトカラー 主に産業界のクリエイターたち。機械との親和性も高い世界ですが、人間の意図が重要で、まだ人間優位とされます。ただし海外との競争を忘れてはなりません。
3. ロボットはアシスタント 本来の中間管理職的な業務における 創造性 が求められる世界。ただし、徐々に部下を管理するよりも、IT をアシスタントとして使いこなすスキルへの変化も必要になります。
4. 機械とバトルロワイヤル 機械やコンピュータがやってくれるなら、おそらく全然問題ない世界。同じことの繰り返しも多く、コンピュータとの相性が良い。AI なら自ら改善を図り、さらなる能力向上も期待できます。
このように各職種・各業界ごとに自動化の濃淡が変わってきます。逆に言えば、今からどの職種・業界で働いた方が自分のためになるのか を考えやすい時代になった、とも言えます。
最後に ── 個人の判断はシンプルになる
「自動化と仕事」に限って言えば、私たちが気にするべき点はとてもシンプルです。
- お金を稼がないと生きていけない(食べることができない)なら、ロボットに代替されない仕事を知って対策しておくこと
- お金を稼がなくても生きていける(食べ物などロボットが自動で作る)なら、好きな仕事をしたり、趣味に没頭すればいいということ
社会全体としては、この 2 つの条件のどちらが、どこまで、どんなスピードで成り立つのか。それを決めるのは技術だけでなく、税制・教育・所得再分配の設計です。
補足 ── 自動化の周辺で起きていること
連載の最後に、よく混同される 3 つの論点を整理しておきます。
マイナンバーなどの個人情報漏洩は、どの問題に分類されるのか? データ(この場合個人情報)を使って何を人に紹介するか、という意味では、詐欺も「選択の方法」の問題に入ります。Amazon のおすすめ商品は詐欺とは呼ばれていなくても、悪意がないと言えるのでしょうか。詐欺師だけが悪い誘導をしているわけではありません。
人間がやる仕事とロボットがやる仕事に分けることは、どの問題に分類されるのか? ロボットが選択肢を紹介するという意味では「選択の方法」ですし、人間の行為=仕事を自動化するという意味では「仕事の自動化」になります。そもそも人間はどんな仕事の成果物=商品に満足するのか、ということが大事なポイントです。服で言えば、袖の長さや雰囲気までこだわるのなら人間の仕事ですが、ユニクロなどの大量生産品でいいのなら機械の仕事です。逆に言えば、人間の満足度が低ければ何でも自動化することができます。
SF にあるような人工知能による人類滅亡は、どの問題に分類されるのか? ロボットにとってみれば「人間が必要ない」という計算結果を出しているにすぎず、つまり「おすすめ」をしているのと同時に「人間の全ての行為」を自動化しているというわけです。なので「選択の方法」を第 1 段階とし、「人間の行為=仕事の自動化」を第 2 段階とします。ロボットに「効率性」を重視させれば、人間はロボットよりも効率的ではないので人間はいらなくなりますが、ロボットに「矛盾」を重視させれば、人間はロボットよりも矛盾を処理できるので、人間はロボットよりも高度となります。
最後の問い
仕事はできれば手放したい負担なのか。それとも、人間が幸福を感じる源そのものなのか。あなたはどちらの前提に立ちますか。そしてその前提が崩れたとき、何を選び直しますか。
「すべて機械に任せる/自動化に対抗する」の二択を急ぐ前に、まずこの二面性を行き来してみる ── そのこと自体が、kumoism がこの連載でやりたかったことです。
連載をはじめから:
→ 1/4 背景篇 → 2/4 メリット篇 ── 働かない幸福と機械の生産性 → 3/4 デメリット篇 ── 働かない貧困と能力の衰え