ベーシックインカムの二面性 ── 背景篇
なぜ今ベーシックインカムなのか。働かなくてもお金が入る制度の前に、いまのお金の入手経路と、ひとつの根源的な問いを整理する 4 部連載の序章。
ベーシックインカム(以下 BI)とは、「全ての人に、個人単位で、無条件で、現金で、生涯にわたって、生活に必要な最低限のお金を、定期的に給付する」制度のことです。
とてもシンプルな制度ですが、なかなか実現されることがなく、2016 年 1 月にオランダで実験的に施行されたことで一時注目を集めました。
BI の良い面と悪い面を、本連載は全 4 回に分けて紹介していきます。構成は以下のとおり:
なぜ今、BI なのか
BI を考える前に、いまのお金の入手経路を整理しておきます。BI が無い現在は、大きく分けて 仕事 と 社会保障 が主な経路です。
しかし、いずれも揺らいでいます。
- 仕事に就いていない人がいる。仕事を通してお金が手に入らない人がいる
- 企業の収益が上がっても給与が必ずしも上がるわけではない。仕事で頑張ってお金を手に入れにくい人がいる
- 平均給与は以前よりも下がった。仕事を通してお金を手に入れにくい人が増えた
- 生活保護受給者と負担金は増えている。お金を政府に頼っている人が増えている
家庭にお金が入ってこなければ消費できません。税収も無理やりにしか増やせません。消費できないなら企業の売上が上がらず、税金が増えなければ社会保障もうまく機能しません。
(企業の売上が上がったからといって給与が上がったり、税収が増えたからといって公共サービスが充実するとは必ずしも言えませんが。)
もちろん消費も税収も増えないことで「適切な国家のサイズ」になるならそれで良い、と考える人もいます。しかし良くないと考える人にとっては、新しいお金の入手経路を考える必要があります。BI はその候補のひとつです。
BI の議論で見落とされがちな論点
BI の議論ではよく「財源は確保できるのか」が焦点になります。しかし、財源の問題は BI に限った話ではありません。社会保障全般に共通する問題です。
では、BI に特徴的な要素とは何でしょうか?
それは、現金で給付され、その用途が自由であること です。
BI の核心にある問い
BI の二面性を見ていくうえで、最も重要なのはこの問いです。
人間は自由にお金が使えたら、適切に使えるのか?
賛成派は「人間は理性的にお金を使える存在だ」と前提を置きます。 反対派は「人間は感情や欲求に流されてお金を使ってしまう存在だ」と前提を置きます。
このどちらが「正しい」かは決められません。しかしどちらの前提を取るかで、見える景色が大きく変わります。
次の 2 回では、賛成派の世界と反対派の世界をそれぞれ書きます。
→ 次の 2/4: メリット篇 ── 自由と理性の経済