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出産育児の二面性 ── 背景篇

少子高齢化はなぜ問題なのか。日本・米仏・北欧・韓国の人口データを並べ、出産育児を「自己責任」と「国民協力」のどちらに置くかという根源的な選択を整理する 4 部連載の序章。

これは特定の立場を支持・非難する目的ではなく、出産育児を「個人の自由と自己責任」に委ねる立場と、「国民全体の協力」で支える立場の論理と倫理を独立した記事として描き、両側の視点を提示するための作品です。性別・世代・家庭形態を断罪する意図はありません。

出産育児の二面性 とは何か ── 少子高齢化が日本では大きな社会問題とされ、保育園不足や育児支援、女性の労働参加といったテーマが繰り返し議論されています。本連載ではこの問題を、賛成 / 反対の単純な対立ではなく、「子育てを誰が担うのか」という根源的な選択の二面性として全 4 回に分けて見ていきます。

過去には 高齢者は投票して社会保障政策を強化し、若者は財布の紐をしめることで対抗する という記事を 2014 年 12 月の衆院選前に書き、二面性の入り口を提示したことがあります。今回はその続きとして、出産育児そのものを掘り下げます。

「少子高齢化」とはそもそも何か

言葉だけ冷静に見てみると、少子高齢化とは「子どもが少なくて、おじいちゃんおばあちゃんが多い状態」のことです。つまりあくまで少子高齢化とは「」について言っているだけなのです。

では、数が何でそんなに大きな問題なのでしょうか。そもそも数が足らないなら増やせばいいだけじゃないの?と思うかもしれません。そこに大きなジレンマがあります。

今回紹介するのは、

の二つです。それぞれを 2/4・3/4 で見ていきますが、まずは出産育児に関するデータを予めインプットしておきましょう。

※人口に関しては特徴的であるアメリカ、日本、フランス、デンマーク、韓国を比べてみることにします。

出生率: 先進国の中で日本はどこにいるか

戦後直後に比べれば比較的先進国は出生率が下がっています。フランスは 2 近く あり、子育て支援の手厚さがしばしば引き合いに出されます。日本と韓国は低位で推移しています。

出生率の推移 1960-2014

出典: Fertility rates 1960-2014 (OECD)

若年人口と高齢人口の比率

現状では若者の人口割合はアメリカが多く、日本は圧倒的に低いとされています。

若年人口の推移 1950-2014

出典: Young population 1950-2014 (OECD)

高齢者の人口割合は日本がダントツです。他の国も増えてはいますが、日本のペースは際立っています。

高齢人口の推移 1950-2014

出典: Elderly population 1950-2014 (OECD)

生産年齢人口を比較すると、韓国の比率が多いことが分かります。

生産年齢人口の推移 1950-2014

出典: Working age population 1950-2014 (OECD)

ここまでグラフを 4 つ見ても、日本の特異さがお分かりかと思います。そして極めつけはこれです。

2025 年、現役 1.8 人で高齢者 1 人を支える

2025 年の人口扶養比

出典: 2025 年、高齢者 1 人を現役何人で支える?(財務省)

2025 年には 1.8 人の現役世代が 1 人の高齢者を支える ようになると試算されています(もちろん今の社会制度のままであれば)。1965 年には 9.1 人で 1 人を支えていた状態と比べると、社会保障の設計そのものが揺らぐ水準だと考えられます。

二つの選択肢: 自己責任か、国民協力か

数字を眺めると、対応の方向には大きく二つの考え方があります。

どちらの立場にも独自の論理と倫理があります。一方を「無責任」「冷酷」と切り捨てる前に、両方の世界を一度ずつのぞいてみたい ── それがこの連載の出発点です。

次回はまず 保育園新設に反対するような人の意見、つまり出産育児は自己責任のもとで行なうべきだ、という主張の二面性を紹介します。


→ 次の 2/4: 自己責任篇 ── 自由な子育てとその代償 → 連載目次: 3/4 国民協力篇4/4 まとめ篇