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集団的自衛権の二面性 ── デメリット篇

殺さない・殺されない状態こそが平和だ。自国防衛・食糧/エネルギー自給・ODA による戦争予防 ── 反対派の論理を、輸入依存と海上交通路のデータと共に描く。

連載 3/4。2/4 メリット篇 の続きです。

平和とは、武力以外の方法で守られる、殺さない・殺されない状態のことだ」── この前提から見ると、集団的自衛権 には深刻なデメリットがあります。

簡単に言えば、戦争・紛争に巻き込まれれば、自国の国民がたくさん死んでしまう可能性が高まる。お金も大量に使う。それよりも、武力以外の方法で間接的に平和を作れた方がいい ── これが反対派の出発点です。他国が戦争・紛争に遭っても、自国が安定していけるような状態を目指す必要がある、とも考えます。

戦争予防こそが、最大の安全保障

反対派から見れば、軍事力で「勝つ」ことよりも、戦争そのものが起きないようにすることのほうが重要です。具体策は次のようなものです。

戦争を「やる準備」ではなく、戦争を「やらせない準備」をする ── これが、抑止力派とは別の発想の安全保障です。

海外の平和に投資してきた日本

日本の ODA 予算

出典: 外務省 ODA 予算

日本はこれまで、政府開発援助(ODA)を通じて海外の平和に投資してきました。貧困は紛争の温床になるとされ、貧困削減への支援は、結果として戦争予防に繋がります。武器を持たない国際貢献の蓄積は、日本独自の 平和外交資産 と考えられます。

地産地消と新しいエネルギー

一部で増える地産地消

出典: 北陸農政局

国内の一部地域では、地産地消の取り組みが増えています。長距離輸送に頼らない食卓は、輸入が滞っても揺らがない安全保障の足元になります。

代替エネルギーの研究も同じ意味を持ちます。ミドリムシ(ユーグレナ)のような新しいエネルギー資源の開発は、当時から注目されてきました。

日本の脆さ ── 数字で見る輸入依存

反対派の論理が説得力を持つのは、いまの日本がいかに 外に依存しているか を数字が示すからです。

日本が輸入に頼っているもの

出典: JFTC きっずサイト「日本の主な輸出入品」

日本は資源・食糧・エネルギーの多くを輸入に頼っています。輸出で稼いだお金で輸入する構造です。

日本の食糧自給率

出典: 農林水産省 食糧自給率とは

食糧自給率はカロリーベースで約 39%。世界の食糧供給網が止まれば、即座に食卓が揺らぐ水準です。

日本のエネルギー自給率

出典: 関西電力 日本のエネルギー事情

エネルギー自給率はさらに低い水準にあります。輸入が止まれば、ほとんどの生活インフラが止まる、と考えられます。

日本のエネルギー輸入元

出典: 日本の石油・石炭・LNGの輸入元をグラフ化してみる (2015 年)

特に石油は、その多くを中東に依存しています。反対派は本来、この 依存先こそ守らなければならない他国 ではないか、という鋭い指摘もすでに含んでいます。

「閉じこもれない国」という矛盾

ここに、反対派の論理の最大の弱点があります。

海上交通路

出典: Booming Shipping Network

エネルギーや食糧を運ぶ海上交通路の安全がなければ、日本は閉じこもることすらできません。「他国に頼らない」と言いながら、現実には他国の海と港を通って物資が届きます。

日本の主な貿易相手国

出典: JFTC きっずサイト「日本の主な貿易相手国」

中国は日本の主要な貿易相手国の一つです。経済的に深く結びついている相手と戦争になる可能性は低いとされる一方、もし関係が悪化すれば、自国経済も同時に大きな打撃を受けます。

つまり、自国密接な国が攻撃された場合には、自国にも大きな影響が出ます。これまではアメリカの軍事力が弱まる傾向がなく、同盟も結んでいたので、経済や福祉に集中することができていたとも考えられます。

しかも、その「集中できていた」期間に、日本では失われた 20 年と言われる時期があり、社会保障政策も必ずしも上手く行ってこなかった。他国ともっと多方面から協調していたほうが良かったのかもしれない、という反省も同時に存在します。

反対派のまとめ

軍事力に頼らない平和を本気で追求するなら、集団的自衛権のデメリットは深刻に映ります。

ただし、現代の日本は資源・食糧・貿易のすべてで他国に深く依存しています。完全な自国優先は現実には難しい ── この矛盾を、どう折り合いをつけるのか。

賛成派と反対派、それぞれが見ている世界はまったく違います。しかし、その どちらも捨てない道 はあり得るのでしょうか。


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