集団的自衛権の二面性 ── メリット篇
平和は抑止力によって守られる。中国の軍拡、米国の縮小、ハイブリッド戦争に備える賛成派の論理を、自衛官応募・サイバー攻撃・ドローン市場のデータと共に描く。
連載 2/4。1/4 背景篇 の続きです。
「平和は、軍事的な抑止力によって守られる」── この前提から見ると、集団的自衛権 には日本の安全保障を立て直すための大きなメリットがあります。
簡単に言えば、軍事費を増強し、自衛隊一人あたりの戦力を上げ、中国が手に入れたい他国の領土や、テロリストが攻撃したい国を守り、日本の軍事力を見せつけて相手を抑止する ── これが賛成派の描く道です。
中国の軍拡と米国の縮小 ── 同盟を組み直すべき時
背景篇 で見たように、中国の軍事費は右肩上がりで、アメリカの軍事費は縮小傾向にあります。日米同盟だけに頼っていた時代は、終わりつつあると考えられます。
そして、戦いの形そのものが変わりつつあります。国家対国家の戦争よりも、テロや非対称戦、サイバー空間や宇宙空間まで含めた ハイブリッド戦争 の比重が増えています。これらは外交だけでは止められない、というのが賛成派の出発点です。
具体策 1: 兵士と武器の改善
少子高齢化が進む日本では、人口と年齢で正面から戦力を増やすのは難しい。だからこそ、技術と仕組みで補強する必要があります。
- 人工知能を持った ドローンの大量生産、サイバー空間と宇宙空間からの情報戦の制圧
- そのため、義務教育からプログラミング学習を必修にする
- 自衛隊の採用者数を増やすため、自衛隊を題材にした映画・アニメ・ドキュメンタリー番組を制作する
- 徴兵制は不人気なので、民間企業による軍需産業を育てる
- 愛国心を高めるために、外国人が日本を尊敬する番組を作ったり、「日本人であるだけで幸せ」と思ってもらう
- 敵と出会ったときに躊躇せず対処できるよう、普段から敵対する勢力を悪く見せる教育を行う
これらの一部は強烈に見えるかもしれませんが、軍事を機能させるとは、こうした 心理面の準備 まで含むということです。

出典: 防衛省防衛白書 自衛官の採用について
東日本大震災以降、自衛官候補生の応募者数は増えました。災害派遣の活躍を通じて、自衛隊への社会的支持はむしろ強まったとされます。賛成派から見れば、これは戦力増強の追い風です。

出典: THE IMPORTANCE OF DATA (PART I)
サイバー攻撃は年々急増しています。国境のない戦場 が拡大している以上、防衛もそこに対応せざるを得ません。

出典: THE DRONES REPORT
ドローン市場は今後も伸び続けると見込まれています。早期に技術を内製化しなければ、軍事と民生の両面で他国に大きく後れを取るとされます。
具体策 2: 兵士と武器以外の補強
直接的な兵士と武器の改善だけではありません。賛成派が描く道は、社会全体を「強い国」に作り変えることでもあります。
- 軍事費の財源を確保するため、国民の所得を上げる必要がある。産業を発展させる
- 兵器の改善をはかるため、科学技術を発展させる必要がある。助成金や研究費の拡充
- 他国との国際的な関係性を強めるため、多言語学習を必修にしたり、他国の宗教を勉強する時間を設けたり、資源競争にも勝てるようにする
軍事力は単独では機能しません。経済・教育・外交が同時に強くなければ、抑止力にはならない ── これが賛成派の総合的な視点です。
同盟の網に入る、ということ

出典: Wiki Collective security
世界では多くの国が、すでに軍事同盟のネットワークに入っています。「同盟を組まない」という選択は、世界のスタンダードからは外れています。集団的自衛権を持つことは、この網に 対等な参加者として加わる ことに近いと考えられます。
抑止が刺激になる、というリスクは認める
ただし、賛成派の論理にも、最大の弱点があります。それは 抑止のための軍事的威嚇が、相手に刺激を与え、戦争・紛争に繋がってしまう可能性 です。
平和な状態が抑止力のおかげなのかどうかは判断しづらい一方で、軍事力のせいで戦争になってしまえば、集団的自衛権はあまり良いものとは見られないでしょう。

出典: 集団的自衛権の行使事例
過去の集団的自衛権の行使事例を見ると、実際に戦争に発展したケースが多いとされます。

出典: The 13-Year War
アフガン戦争でアメリカが使った金額は膨大です。同盟に深く関わるほど、自国の財源も人命も巻き込まれていく ── これは賛成派も認めるトレードオフです。
賛成派のまとめ
抑止力を信じ、同盟の網に対等な参加者として加わるなら、集団的自衛権のメリットは大きく現れます。
- 中国共産党の軍事拡張や、米軍縮小後の力の空白に備えられる
- ハイブリッド戦争・サイバー戦・宇宙空間に対応できる
- 軍事力を背景とした外交カードを持てる
- 同盟国との関係性が強化され、資源・経済の安全保障にも繋がる
- 自衛隊への社会的支持や産業基盤も拡大する
ただしこれは、「軍事的な抑止力こそが平和を作る」という前提があってこその話です。その前提が崩れたとき、何が起こるか ──。
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