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著作権の二面性 ── デメリット篇

コピーや二次創作はオリジナル制作者からアイデアと収益を奪う。知的財産権侵害事犯、海賊版、コミケ二次創作 732 億円、違法ダウンロード規制 ── 著作権を強く守るべきだとする側の論理を、データと共に描く。

連載 3/4。2/4 メリット篇 の続きです。

コピーや二次創作はオリジナル制作者からアイデアと収益を奪う」── この前提から見ると、著作権の二面性 には深刻なデメリットの面があります。

コピーによる主な問題は、コピーを売ることでオリジナル制作者へ被害が発生すること です。具体的にはどんな被害でしょうか。

例えば、オリジナルより売り方がうまくてオリジナルが売れなくなる こともあるでしょうし、オリジナルほど売れなかったとしても、オリジナル制作者の意図しない扱われ方 をされていたら、制作者は深く悲しむかもしれません。

さらにインターネットの普及で大きな問題になるのは、映画や写真が劣化せずにコピー されることです。本当は DVD や本を買わなければ見ることができないものが、無料で見られてしまう ── 当然、オリジナル制作者にはお金は入ってきません。

知的財産権の侵害は減っていない

警察の検挙データを見れば、知的財産権の侵害は 継続して発生 しています。

最近 10 年間における知的財産権侵害事犯の検挙状況の推移(H17〜H26、検挙事件数 400〜600 件で推移)

出典: 警察庁「偽ブランド品・海賊版の根絶に向けて!!」

検挙事件数は 年間 400〜600 件規模 で推移し、近年は再び増加傾向にあるとされます。摘発できるのは氷山の一角に過ぎず、実害ベースの被害件数はこの何倍 にもなると考えられます。

商標権侵害事犯と著作権侵害事犯の侵害形態(インターネット利用が 64.1%、インターネット・オークション利用 18.9%)

出典: 警察庁「偽ブランド品・海賊版の根絶に向けて!!」

著作権侵害事犯の 64.1% はインターネット利用 によるもので、オークション経由を加えるとほぼ 8 割に達します。コピーの主戦場は完全にデジタル空間 に移っており、物理的な国境では止められない時代に入りました。

二次創作の現場 ── 規模感を直視する

「二次創作はファン文化として豊かだ」という見方は確かに存在します。しかし、規模感を見ると軽い話ではない ことが分かります。

pixiv 投稿作品の例(資料は二次創作に肯定的だが、原作者からすれば意図しない扱い方をされている可能性も大きい)

出典: 日本の創作を支える二次創作と草の根活動

この資料の出典元自体は二次創作に肯定的な立場ですが、原作者から見れば「快く思わない表現」で自作品が扱われている可能性 は大いにあります。「肯定派が多数だから問題ない」という論法は、原作者個人の苦痛を見落とします。

コミックマーケット 88 のジャンル別比率(全体の約 3/4 が二次創作、市場規模 732 億円)

出典: 日本の創作を支える二次創作と草の根活動

コミックマーケットの 市場規模は約 732 億円 に達し、参加者数はのべ約 55 万人、サークル申込数は約 4 万 6 千とされます。そのうち 約 3/4 が二次創作 ──「これだけの規模で、原作者の事前許諾を取らないまま売買が成立している」と捉えると、個人クリエイターの権利が事実上スルーされている とも見えます。

コミケ 86 人気タイトルの 2014 年上半期 pixiv 作品投稿数(艦これ・東方 Project が突出)

出典: 再びコミケと pixiv の二次創作人気を調べてみた(夏コミ編)

pixiv への投稿数を見ると、人気作品ほど大量の二次創作 が生まれていることが分かります。これは原作の人気を裏付ける指標である一方、原作者・出版社・アニメ制作会社の意向に関係なく 派生作品が増殖している状態でもあります。

違法ダウンロードへの「歯止め」は実際に効いた

「ネットだから取り締まれない」という諦観に対しては、法改正の効果 が反例として存在します。

違法ダウンロードに利用される可能性があるサイトの日本における利用者数推移(2012 年法改正前後で大幅減)

出典: 違法ダウンロード罰則化、効果はあったの?

2012 年に著作権法が改正され、違法ダウンロードに罰則 が設けられました。改正の認知度が高まるにつれて、ストレージサービスサイトや P2P・BitTorrent などの利用者数は 明確に減少 したとされます。「規制は意味がない」という主張は、少なくともこのデータの前では成立しにくいと考えられます。

デメリット側のまとめ

「コピーや二次創作はオリジナル制作者からアイデアと収益を奪う」という前提に立つと、著作権の二面性 のなかで、デメリットの側は次のように描けます。

ただし、規制を強めれば強めるほど、メリット篇で挙げたような文化の伝播 ── 模倣・引用・翻案 ── までもが萎縮するリスクもあります。著作権の強化と緩和、その どちらも捨てない道 はあり得るのでしょうか。


→ 次の 4/4: まとめ篇 ── オリジナル制作者に 100% 還元することの限界 → 連載目次: 1/4 背景篇2/4 メリット篇