多様性の二面性 ── 成立篇
深く傷ついても他人を受け入れ続けられるか。承認・無知のヴェール・偉人列伝・グローバル経済 ── 多様性を成立させる側の論理と前提条件を、賛成派の視点で描く。
連載 2/4。1/4 背景篇 の続きです。
「人は他者を受け入れることで、より豊かに生きられる存在だ」── この前提から見ると、多様性のある社会には大きなメリットがあります。
そもそも多様性が成り立つというのはどういうことでしょうか。それは「他人を受け入れる」ということです。では他人を受け入れることのメリットは何でしょうか。人によっては当たり前のことですが、改めて考えます。
受け入れられると、嬉しい
まず至極単純な話、周りに認められたり受け入れられたりすると嬉しい でしょう。自分が受け入れられると嬉しいので、自分も他人を受け入れます。
結婚という生涯ともにするパートナーに、人が愛情や優しさを求めるのも、このシンプルな原則の延長線上にあります。

出典: 男性が女性に求める!結婚相手への条件は?
無知のヴェール ── 立場の弱い人に合わせる
それから哲学者のジョン・ロールズは「無知のヴェール」という概念を紹介しています。要は自分がどんな立場かわからなければ、自分が立場の低い人だと考えて、立場の低い人のためにコミュニケーションや社会の制度を合わせる という発想です。
立場の弱い人が受け入れられる社会なら、誰もが満足に生きることができるかもしれません。

出典: 哲学用語図鑑「ジョン・ロールズ」
誰が、いつ、能力を発揮するか分からない
また、この 変化が多い世の中で、誰がどんな場面で自分の能力を発揮するかわかりません。過去の偉人の中には差別を受けた立場(女性や黒人)や障がい者の方々がいます。

出典: Famous Jewish people

出典: The World’s 100 Most Powerful Women

出典: Famous black people who changed the world

出典: Famous Gay People

出典: The World’s Most Famous Disabled People
歴史上の偉人を「もし排除していたら」と考えると、社会が手放したであろう価値の大きさが分かります。これは結果論ではありますが、いまの社会が誰の能力を取りこぼしているか という問いには直接つながります。
グローバル経済の側からも、受け入れは必要
それから経済的な側面もあります。グローバルに商売を行なうため相手の文化をよく知ったり仲良くしたり、労働者が足らないため社会的に弱い立場の人でも働いてもらえるだけ助かることがあります。
社会的に弱い立場の人も普通に働いて普通にお金がもらえることで、自然と社会的な立場が普通になっていく ── そういう経路もあると考えられます。

出典: 世界の多国籍企業ランキング

出典: グローバル人材育成の推進に関する政策評価

出典: 平成 27 年障害者雇用状況の集計結果
成立させるための 2 つの前提条件
多様性ある社会が成り立つと、これらの良い面を手に入れられることが分かりました。しかしこれを成り立たせるには、前提条件が 2 つ あります。
1. 自分の生活よりも、他人の最低限の生活を確保することを優先する
例えば税金や制度など、お互いにどこまで譲り合えばお互い最低限の生活を確保できるのか、よく対話・議論する必要があります。その対話の姿勢は、自分と同じか、もしくはそれ以上に相手を敬っていなければ生まれません。
2. 「良い人間」の基準を水平に持つ
人はどうしても人間関係を上下=垂直に考えてしまいがちです。たとえば年齢が上なら立場が上、お金持ちならより幸せ、顔立ちがよければ優遇される、などなど。しかしこのように上下のコミュニケーションをとっていたら、絶対に差別意識が生まれます。
女性も障がい者も赤ちゃんも子どもも、お年寄りも学校の先生ですら、みんな対等で自分と相手は 水平に並んでいる とお互いに考えると、対話や議論は上手く行きます。
対等な関係をもつには簡単な考え方があります。それが「誰にも良い面と悪い面、長所と短所がある」という見方です。聖人君主のような人にも悪い面はあり、極悪犯罪者のような人にも良い面はあります。自分にとっての良い悪いだけでなく、社会や人類にとって良い悪いの見方があります。
賛成派のまとめ
「人は他者を受け入れることで豊かになる存在だ」── この前提が成り立つなら、多様性のある社会のメリットは大きく現れます。
- 受け入れられた人は他人を受け入れる側に回る。承認の連鎖が広がる
- 立場の弱い人に合わせる制度設計が、結果として全員の安心につながる
- 排除されていた人材の能力を社会が受け取れるようになる
- グローバル経済と労働力不足にも、多様性が直接効く
- 自分と相手を水平に並べる視点が、対話と議論の生産性を上げる
ただし、これら 2 つの前提条件には 大きなデメリット があります。それは お互いに精神的に傷ついたり、生活の一部を我慢しないといけなかったりすること です。
その不自由さも含めて、次は多様性がなぜ現実に成り立ちづらいのかを考えます。
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