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経済格差の二面性 ── 背景篇

「1% と 99%」のデモ、ピケティの r > g、ジニ係数の国際比較 ── 経済格差とは何か。労働・資産・相続の格差を分解し、小さな政府と大きな政府の選択へとつなげる 4 部連載の序章。

これは特定の立場を支持・非難する目的ではなく、格差を許容する側と是正する側それぞれの論理と倫理を独立した記事として描き、両側の視点を提示するための作品です。特定の国・階層・属性を断罪する意図はありません。

近年、先進国を中心に 経済格差 に関する関心が高まっています。各地で「1% と 99%」のデモが起こり、トマ・ピケティ著「21 世紀の資本」はベストセラーとなりました。ではそもそも「経済格差」とは何なのでしょうか。

本連載は 経済格差の二面性 を全 4 回で見ていきます。個人の生活の責任は誰がとり、国民はどんな生活を送りたいのか ── その問いに、データと風刺画を通じて向き合います。

経済格差とは何か ── 3 つの差に分解する

経済格差とは、手に入れられるお金や高価値な物の量が人によって差がある、ということです。具体的には次の 3 つに分けて考えると見通しが良くなります。

「給料が高い人と低い人がいる」だけが経済格差ではありません。同じ給料の人どうしでも、相続した家を持つ人と持たない人、投資で利益を得る人と得ない人のあいだには、別の格差が積み上がっていきます。

ピケティ『21 世紀の資本』── 資本収益率と経済成長率の長期比較

出典: Reading Piketty In Japan

ピケティは、長期データから 資本収益率 (r) が経済成長率 (g) を上回り続けている ことを指摘しました。つまり「働いて得るお金の伸び」よりも「投資して得るお金の伸び」の方が大きい状態が、歴史的にはむしろふつうだとされます。

これが意味するのは、放っておくと 資産を持つ人と持たない人の差は時間とともに広がる ということです。

国によって格差の大きさは違う ── ジニ係数で見る

国ごとに経済格差の大きさは違います。ジニ係数 は 0 から 1 で測られ、1 に近いほど格差が大きいことを示します。

国別経済格差の状況(ジニ係数)

出典: Gini Coefficient World CIA Report 2009

南米やアフリカの一部の国はジニ係数が高く、北欧諸国は低い。同じ「資本主義」のなかでも、税制・社会保障・労働法のあり方によって、格差の出方は大きく変わります。

なお以下の話は、民主主義・資本主義 である政治体制を想定しています。また極端な例として整理しているもので、実際の社会はいずれの要素も複合的に持っています。

二面性の核心にある問い

経済格差の議論は、最終的にひとつの選択に帰着します。それは「小さな政府か、大きな政府か」という選択です。

そして連載全体で行き来する核心の問いはこれです。

格差は、自由と引き換えに払うべき正当な代償なのか。それとも、社会全体で消すべき不正義なのか。

賛成派(メリット篇)は「格差は自由の結果であり、努力に報いる仕組みだ」と前提を置きます。 反対派(デメリット篇)は「格差は機会の不平等の結果であり、社会全体で是正すべきだ」と前提を置きます。

このどちらが「正しい」かは、データだけでは決められません。しかしどちらの前提を取るかで、税制・教育・社会保障の見え方は大きく変わります。

次の 2 回では、賛成派の世界と反対派の世界を、それぞれ独立した記事として書きます。


→ 次の 2/4: メリット篇 ── 自由競争と小さな政府の論理