学習環境の配分の二面性 ── 家庭負担篇
教育費を家庭が負担する社会では、子どもは親の価値観の数だけ多様に育つ。個性、自由、自己責任 ── 私費中心の教育が拓く景色を、賛成派の論理とデータで描く。
連載 2/4。1/4 背景篇 の続きです。
「教育費の負担と内容は、家庭が自由に選ぶべきである」── この前提から見ると、私費中心の教育環境には大きな意味があります。日本やアメリカ、オーストラリア、韓国などの就学前教育・高等教育は、こちらの考え方に近い設計です。
教育格差は「自由」の結果として現れる
まず分かりやすいのが、家庭負担にすると 教育格差 が生まれることです。一見デメリットに見えますが、これは「自由」の必然的な帰結でもあります。
大人は いくら稼ぐかを自分で決めることができます。奨学金を借りてでも学校に通うことができ、それによって能力を上げ、相応の会社に入ることができます。専門学校や大学は年齢制限がほぼありません(防衛大学などを除いて)。
また、子どもを何歳で生むかも自分で決めることができます。晩婚・高齢出産が増えているのも、自分で生むタイミングを決めているということの表れです。
つまり、お金をいくら稼ぎ、子どもの教育にいくら使うかは 個人の価値観次第 であり、自由です。みんなの価値観が違うように、差ができるのはむしろ当然の結果と言えます。
学力を左右する 4 つの大きな要因

出典: 書籍「学力の経済学」
東京大学の学生の親は年収が高い人が比較的多いとされています。
子どもの学力に影響する大きな要因として知られているのは、おもに次の 4 つです。
- 学校外教育費の支出
- 保護者の学歴期待
- 家庭の所得
- 母親の学歴

出典: 書籍「学力の経済学」
学歴によって生涯年収は変わるとされており、学歴の良い親の子どもなら教育費にお金をかけやすくなります。

出典: 年収別の家計簿まとめ。何にいくら使ってる?
年収が高ければ、教育費にかけるお金の割合も大きい傾向があります。

出典: 書籍「学力の経済学」
母親の学歴が子どもの学力に与える影響は大きいとされています。
「親ガチャ」は乗り越えられるか
ここまでくると「親が悪いから自分も悪いんだ」と考えてしまいそうですが、自分が頑張って勉強したり(インターネットも図書館もあります)、頑張って年収を上げたり(年収の高い職業に合う学校に通えます)すれば、自分の子どもの世代から改善させることができます。それに全ての良い親が良い子どもに育てることができるわけではないでしょう。
多様な価値観は、ときに「いじめ」を生む
親が子どもに教える価値観がそれぞれ違う=自由だと、子ども同士が集まる学校では価値観が有象無象とすることになります。相手を肯定するよりも否定する方が簡単 ですし、大勢の価値観と少数の価値観なら大勢が強くなりがちなので、いじめに発展しやすい構造があります(政府負担の場合と比較したわけではありませんが)。
そしていじめによって自己肯定感を失う子どもの学力はさらに下がりやすくなる可能性があります。この場合は、どんなに親が教育費をかけても 学校の環境が悪いと子どもの成長を阻害する ことになります。逆もまた然りです。


出典: ストップいじめ!ナビ いじめをとめたい大人たちへ
「自由」の良い面:満足度と幸福度
家庭負担の悪い面ばかり見てきましたが、家庭だけが悪いわけではありません。背景篇でも確認したとおり、この場合は「インプット(資源:お金や親、学校など)」を 自由かつ多様に個人個人が選んでいる ということなのです。
つまり選び方によっては悪くもなりますが、良くもなります。日本の若者にどう良く影響しているのか、データを見ていきます。

出典: 国民の生活に関する世論調査
現在の生活に対する満足度は、20 代では 8 割近く が満足していると答えています。

出典:「中学生・高校生の生活と意識調査・2012」について
中学生・高校生にいたっては 9 割近く が幸せを感じていると答えています。



出典: 社会実情データ図録
2012 年の学力国際比較を見ると、日本は割と高いところに位置しているとされています。
競争を放棄して、自由に遊ぶ子もいていい
このシリーズの賛成派の風刺画では、教育の格差を運動会の徒競走になぞって描いています。しかしよく見ると、その中に 競争を放棄して自由に遊ぶ子ども もいることに気づくはずです。
自由に選べるということは差を作りますが、同時に 多様性 にもつながる ── これが家庭負担側のひとつの絵です。
家庭負担派のまとめ
最後に家庭負担のメリット・デメリットをまとめます。
- 目的: 最低限を学校で、それ以外は家庭や子どものニーズに合わせる。多様になる
- メリット: 個性を育てることができる、個人個人の速さで成長しやすい
- デメリット: 格差が激しくなる。無計画な親の子どもはただただ貧困に陥る
「自由と多様性のためなら格差は引き受けるべきだ」という前提が成り立つなら、家庭負担の意味は大きく現れます。
しかしその前提が崩れたとき、何が起こるか ──
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