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学習環境の配分の二面性 ── 背景篇

子どもにとっての良い教育とは何か。学習環境を誰が負担するかという二面性を考える前に、教育のインプットとアウトプット、そして日本の教育予算の現状を整理する 4 部連載の序章。

教育とは何でしょうか?ブリタニカ国際大百科事典小項目事典によると以下のように定義されています。

「教え育てること。知識、技術などを教え授けること。人を導いて善良な人間とすること。人間に内在する素質、能力を発展させ、これを助長する作用。人間を望ましい姿に変化させ、価値を実現させる活動。」

人間と書かれていますが、多くの方が想像するのは未成熟な人間である「子ども」だと思います。そして教育の環境を作るには何かしらの費用、特にお金がかかります。本連載では 学習環境の配分の二面性、つまり「子どもの教育費を誰が負担するか」というテーマを 4 回に分けて紹介していきます。

構成は以下のとおりです。

教育の「インプット」と「アウトプット」

まず前提を共有します。子どもに何かを教えるためには 資源(例えば親や学校、お金)が必要であり、その結果、子どもは何かを学びます(例えば学力や人間性)。

インプットとアウトプットの考え方

出典: 書籍「学力の経済学」

この インプット(資源:お金や親、学校など)が子どものアウトプット(成果:学力や年収、幸福度など)に影響を与える という考え方が、本連載を通してかなり重要になりますので覚えておいてください。

また、一部のインプットが良くても、一部のインプットが悪ければ、アウトプット全体を阻害することもあります。次回以降、具体的に見ていきます。

国別の教育費の負担構造

国によって、教育費を 私費(親や家庭) が負担するか 公費(政府) が負担するかの比率は大きく異なります。

国別の教育費の私費と公費の割合

出典: 日本の公的教育支出、対 GDP 比は OECD 平均以下

日本は就学前教育や高等教育の段階で、私費負担の割合が比較的高い国に分類されます。アメリカ、オーストラリア、韓国なども同様の傾向です。一方で、北欧諸国(スウェーデン、ノルウェー、デンマーク)は公費負担が大きい構造になっています。

日本の教育予算は縮小傾向

日本の教育予算の推移

出典: 雑誌「東洋経済 教育の経済学」

日本の教育予算自体は、長期的には縮小傾向にあるとされています。

学校が生徒一人にかけている費用

出典: 文部科学省 調査結果の概要「学校種類別の在学者一人当たり学校教育費」

学校が生徒一人にかけている費用は、学校種別によって大きく異なります。さらに、公立と私立を比べると、もっと大きな差が生じます。

公立と私立の幼稚園の費用差

出典: 雑誌「東洋経済 教育の経済学」

公立と私立の幼稚園では、家庭が支払う費用に 2 倍以上 の差があるとされています。

「公的教育費は少ないのか?」という問い

ここまでのデータを見て、「日本の公的教育費は少ない!」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、本当に「少ない」のでしょうか?そして、費用が多ければそれで良い と言えるのでしょうか?

インプットを誰が、どれぐらい、どのように負担するか」── この問いには、対立する二つの答え方があります。

どちらが「正しい」かは、価値観によって変わります。しかし、どちらの前提を取るかで、見える景色は大きく変わってきます。次の 2 回では、それぞれの立場の世界を順に書いていきます。


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