大量電気消費と原発の二面性 ── デメリット篇
温暖化、海洋酸性化、原発事故、廃炉、放射性廃棄物、風力の景観破壊 ── 大量電気消費が引き出すもう一方の景色を、反対派の論理とデータで描く。
連載 3/4。2/4 メリット篇 の続きです。
「大量の電気を使うこと自体が、引き返せない代償を生んでいる」── この前提から見ると、原発再稼動を含めて電気を確保し続けることには深刻なデメリットがあります。
便利な生活は大量の発電を必要としますが、大量の発電をする発電所には様々なデメリットがあります。 ここでは主に火力発電、原子力発電、風力発電に関するデメリットを紹介します。
(様々なデメリットがありつつも便利な生活から抜け出せない人間という意味で、メイン風刺画を描きました。)
火力 ── CO2 と温暖化と異常気象

出典: 世界のエネルギー事情(関西電力)
火力発電で 化石燃料を燃やせば燃やすほど地球温暖化が進んでしまう とされます。日本の電力構成は震災後、火力比率が大きく上がり、CO2 排出量も増えました。

出典: Climate Change Indicators in the United States
最近の異常気象は海水温の上昇にあり、海水の二酸化炭素濃度が高まっていることがその原因と考えられています。

出典: 「もうひとつの二酸化炭素問題」に対応するために(気象庁)
二酸化炭素を吸収した海水は酸性になります。太平洋はどんどん酸性化 しており、生態系(特に貝類・サンゴ・プランクトン)への影響が懸念されています。


出典: 二酸化炭素放出量の推計
国別、一人あたりで見ると、先進国の責任の重さが浮かび上がります。日本の一人あたり排出量は決して低くありません。

出典: Typhoon Haiyan(Wikipedia)
異常気象の一つであるスーパー台風はフィリピンに大きな被害をもたらしました。便利な生活を営むために CO2 を排出し、その結果として異常気象を発生させている ── この因果が因果として作用している可能性が高い、というのが反対派の出発点です。
原発 ── 事故・廃炉・放射性廃棄物

出典: 世界の地震(黒点)と原発(赤点)の分布
日本は世界でも数少ない「震源の近くに原発がある国」です。地震が起きる確率と原発が立地する確率を掛け合わせると、ほかの国とはリスクの構造そのものが違っていると考えられます。

出典: 仏原発で福島級の事故起これば経済損失 54 兆円超=研究所(ロイター)
原発事故による経済損失はとてつもなく大きく、そのお金は 税金や電気料金に上乗せされる 可能性もあります。事故が起きてからでは、もはやコストの議論は意味を持ちません。

出典: Nuclear decommissioning(廃炉)の各国の状況
事故が起きなくても廃炉するのに大きなコストがかかります。 数十年単位の時間と数千億円規模の資金が必要であり、その負担は将来世代に引き継がれます。

出典: 低レベル放射性廃棄物貯蔵量・搬出実績(四国電力)
さらに 放射性廃棄物の処分場も用意しなければいけません。 最終処分地が決まらないまま、廃棄物だけが積み上がっていく構造があります。
便利な生活を営むと、今度は人間が作った有害で処理が難しいゴミが大量に発生するようです。
風力 ── 景観・騒音・廃棄
次は自然エネルギーとして期待されている風力発電を見てみます。「原発ダメだから再エネ」と言うが、再エネにも固有のデメリットがあります。

出典: Wind Turbine Generator Technologies
エッフェル塔と比べると、風力発電は結構大きい。景観が損なわれる可能性は大きい と考えられます。

出典: Pros and Cons of Onshore Wind Turbines
風力発電の騒音を他の音と比較した図です。近くの人にとっては結構うるさい 可能性があります。低周波音による健康被害の指摘もあります。

出典: Infographic: Waste, Poor Planning Blunt China’s Wind Energy Ambitions
中国の風力発電所では、計画不備により稼働できない設備が多く出ているとされます。再エネを増やしさえすれば良い、という単純な話でもありません。

出典: 使用済再生可能エネルギー設備関連(環境省)
日本でも風力発電の撤去でゴミが発生し、処理システムはまだ確立していません。ブレード(羽根)の素材はリサイクルが難しく、ここでも廃棄物問題が立ち上がります。
反対派のまとめ
脱原発の方々が主張する自然エネルギーの一つ、風力発電にもデメリットはありました。脱原発派の方々でも、電気のある便利な生活は手放せないのでしょうか。 反対派が突きつけるのは、この問いです。
便利な生活によって異常気象が発生し、大量のゴミが発生し、綺麗な風景は壊されてしまうようです:
- 火力 → CO2 → 温暖化 → 異常気象(観察されている因果と考えられる)
- 原発 → 事故リスク・廃炉コスト・放射性廃棄物(将来世代へ転嫁)
- 風力 → 景観・騒音・廃棄物処理(再エネにも固有の代償)
- どの方式を選んでも、大量に発電する こと自体が代償を生む
「原発がダメだから再エネ」では問題は解けない。そもそも電気をどこまで欲しがるのか、という問い直しが必要だ ── これが反対派が連れていく地点です。
→ 次の 4/4: まとめ篇 ── 明日電気が使えなくなるとしたら? → 連載目次: 1/4 背景篇 ・ 2/4 メリット篇