KUMOism

大量電気消費と原発の二面性 ── まとめ篇

メリットとデメリットを行き来したあと残るのは、自給率 5% という現実と「どこまで欲しがるか」の問い。安全保障と暮らしの間で連載をまとめる。

背景篇メリット篇デメリット篇 と読み進めていただいた最終回です。最後にメリットとデメリットの中間と、その周辺の補足をまとめます。

どの発電方法でも大量発電にはリスクが伴う

どの発電方法でも大量の電気を発電するとしたら、大きなリスクが伴います。ハイリスクハイリターン という構造そのものは、原発を選んでも、火力を選んでも、再エネを選んでも変わらないと考えられます。

結局、私達がどこまでの生活を望むかどうかで、今後もリスクを許容し続けるかどうかが決まります。

電気がなくてもそれなりに毎日生きている人たちは世界にいっぱいいます。(彼らを「劣っている」と見るのか、それとも大きなリスクを抱えた私達を「劣っている」と見るかは、価値観次第です。)

もちろん、そのリスクをゼロにできる技術が発明されるかもしれません。しかしその技術が発明されても、技術はいつもデメリットが付きまといます。完全に代償のない発電方法というものは、今のところ歴史上存在しません。

発電技術以外で、日本がエネルギーに抱えるリスク

最後に確認したいのが、発電技術以外で、日本がどれだけエネルギーにリスクを抱えているかについてです。

原発がなくても過去の需要ピークには間に合っている

出典: とめよう再稼働。二度と原発を動かさないために今、あなたの声が必要です(グリーンピース)

短期的に見れば、原発がなくても過去の需要ピークには間に合っている という見方もできます。震災後の節電と火力での焚き増しで、ピーク需要は乗り切ってきました。

日本のエネルギー自給率はわずか 5%

出典: 関西電力「日本のエネルギー事情」

しかし、日本のエネルギー自給率はわずか 5%。輸入先で何かあれば、一気に需要ピークに間に合わなくなる構造です。原発を増やすか、再エネを増やすか、節電を増やすか ── どの選択肢を取るにしても、この 自給率の低さ が議論の前提を支配します。

原油の輸入先のほとんどはテロで騒がれている中東地域

出典: 平成 24 年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書 2013)

原油の輸入先のほとんどは、テロで騒がれている中東地域です。エネルギー問題は 安全保障と直結 しており、国内の発電方式の議論だけでは閉じません。中東情勢の二面性については、別連載 ユダヤ教とイスラム教の二面性 ── 解説篇 で詳しく扱っています。

老朽化する火力発電所

出典: 火力発電の現状ってどうなっているの? 老朽発電所のトラブルは?

止まっている原発の代わりに動いている火力発電ですが、老朽化していて故障の可能性が大きくなっています。「とりあえず火力で繋ぐ」という暫定状態が長期化することそれ自体が、新しいリスクを生んでいる、と考えられます。

どこまで欲しがり、どれだけ想像し、どこまで責任を持つか

ここまで来て、最後に問い直しておきたいことが 3 つあります。

「原発再稼動賛成」「原発反対」「再エネ推進」── どの立場にも、欲望と、想像力と、責任の問いが付きまといます。自分の選んだ立場の代償 を、自分でどこまで引き受けられるか。kumoism がこの連載で問いたかったのは、立場そのものよりも、この 引き受け方 の方です。

責任の取り方そのものに関しては、別連載 責任の二面性 ── 概要篇 でも扱っています(個人・集団・ネットワーク型責任の整理)。

最後に

このエネルギー問題は 安全保障や成長戦略に大きく関わっており、かつ、私達の生活(燃料の値段など)にも大きく関わっている ことが、おわかりいただけたかと思います。

「原発を動かすべき」「動かすべきではない」の二択を急ぐ前に、そもそも私たちはどこまで電気を欲しがるのか ── この問いを行き来してみる。そのこと自体が、kumoism がこの連載でやりたかったことです。


連載をはじめから:

→ 1/4 背景篇 → 2/4 メリット篇 ── 発電所ありがとう → 3/4 デメリット篇 ── 原発事故おきた、日本死ね