大量電気消費と原発の二面性 ── 背景篇
震災を経て日本のエネルギーは問い直された。原発か再エネかの前に、そもそも私たちはどこまで電気を必要としているのか ── 4 部連載の序章。
注記:この記事は原発・再エネ・福島原発事故のいずれの立場を支持・非難する目的で書かれたものではありません。賛成・反対の両側から「大量電気消費」という前提そのものを見直すための作品です。
2011 年 3 月 11 日、東日本大震災により津波が発生。その津波によって 福島原発事故が引き起こされました。その事故をきっかけに、生き方や暮らし方を見直した人も多いのではないでしょうか。
さて、本連載のテーマは原子力発電所と再生可能エネルギーのそれぞれのメリットとデメリット ── ではありません。一段引いた地点から、沢山の電気を必要とする生活のメリットとデメリット を見つめ直します。
なぜ原発と再エネの比較ではなく、大量電気消費に焦点を当てるのか。それは再エネにも再エネのデメリットがあるからです。将来再エネのせいで何か起きてから「再エネ反対」を叫び、同じことを繰り返すのではなく、ひとまず私達の生活は今後どこまで電気を求めるのか問い直してみましょう、ということです。
本連載は全 4 回構成:
電気の消費はここ 200 年で一気に伸びた
国別や年代別、資源別、発電量、消費量、電気料金 ── 電気の問題には様々な指標があります。まず概観を見ていきます。

出典: World Energy Consumption Since 1820 in Charts
人類が使うエネルギーの総量は、産業革命以降の 200 年で一気に立ち上がりました。それ以前の数千年と比べれば、私達は 歴史上きわめて特異な水準 で電気を含むエネルギーを消費している、と考えられます。
この 10 年では中国の消費量が急増

出典: モリモリ増える中国やインド…主要国の一次エネルギー消費量推移をグラフ化してみる(2015 年)
近年は中国・インドといった新興国の消費が伸びており、世界全体のエネルギー需要を押し上げています。日本だけの問題ではなく、人類全体の問い として広がっている構造です。
主要国の発電は石炭と天然ガスが中心

出典: 【エネルギー】世界各国の発電供給量割合[最新版](火力・水力・原子力・再生可能エネルギー)
主な先進国・新興国の発電構成を見ると、石炭・天然ガス・石油といった化石燃料の比率が依然として高い水準にあります。再エネ比率を上げている国はありますが、世界全体としては化石燃料依存が続いているとされます。
日本人 1 人あたりの電力消費は世界平均の 2 倍超

出典: 日本のエネルギー事情(関西電力)
日本は 1 人あたりの電力消費量で見ると、世界平均の 2 倍以上を使っています。生活水準とエネルギー消費は強く結びついており、私たちの「便利さ」はこの数字に支えられている、と考えられます。
電気料金で見ると日本は先進国の中間

出典: 電気料金の国際比較(2014 年)、電力中央研究所
価格そのものは主要先進国の中間あたり。安すぎる訳でも飛び抜けて高い訳でもありませんが、自給率の低さ(後述)を踏まえると、価格安定の前提は脆い可能性があります。
石油・天然ガスはあと 50 年、石炭は 100 年

出典: 世界のエネルギー事情(関西電力)
化石燃料の可採年数(埋蔵量を年間生産量で割った値)には、石油・天然ガスで約 50 年、石炭で約 100 年という目安があります。技術革新で延びる余地はあるものの、有限である という事実そのものは動きません。
ここから 2 章では、この「大量電気消費」を 肯定する立場 と 問題視する立場 をそれぞれ独立した記事として書いていきます。
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