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社会保障の二面性 ── 背景篇

消費税はなぜ上がるのか。社会保障給付費、平均寿命、高齢化推計のデータで「高齢者を優先する社会」と「若者を優先する社会」のあいだに横たわる選択を整理する 4 部連載の序章。

これは特定の立場を支持・非難する目的ではなく、社会保障を厚くする側と、若者の自由を優先する側それぞれの論理と倫理を独立した記事として描き、両側の視点を提示するための作品です。

2014 年 4 月、消費税が 5% から 8% にあがりました。将来的には 10% になることも、ほぼ確実だと考えられています。ではなぜ、消費税を上げる必要があるのでしょうか。

理由は単純で、政府から高齢者に出すお金 ── 「社会保障費」が足りないからです。主に年金や医療、介護などのために使われています。

本連載は 社会保障の二面性 を全 4 回で見ていきます。

給付は伸び、保険料収入は追いつかない

まず、社会保障費がどのように伸びてきたのかを見ます。

社会保障給付費と社会保険料収入の推移

出典: 財務省 日本の財政関係資料

社会保障給付費は右肩上がりで増えています。一方で、それを支える社会保険料収入はそれほど伸びていません。伸びる給付と、伸び悩む収入のあいだの差 が、税金(とくに消費税)で埋められているとされます。

これは「足りない」という言い方をされますが、見方を変えれば「目標額が高すぎる」とも読めます。誰のために、どこまでの水準を確保するか ── そこに価値判断が入っているからです。

平均寿命は伸び、高齢化は加速する

社会保障費が増える背景には、人口構造の変化があります。

平均寿命の推移と将来推計

高齢化の推移と将来推計

出典: 内閣府 将来推計人口でみる 50 年後の日本

平均寿命は今後も伸び続ける と推計されています。同時に、65 歳以上の人口が全体に占める割合 ── 高齢化率 ── も上がり続けます。長く生きる人が増え、その期間ぶんの年金・医療・介護が必要になる構図です。

ただしこれは、年金や介護を必要とする高齢者を優先するからこそ「社会保障費が足りない」と言われるのであって、もし仮に「若者を優先するため」であれば、「今の社会保障費の目標額が高すぎる」という意味にもなり得ます。

つまり、消費税を含む税金を上げるかどうかは、高齢者を優先するのか、若者を優先するのかに関わってくる問いだと言えます。

3 つの未来 ── 日本はどれを選ぶのか

整理しましょう。日本はおおまかに、次の 3 つの未来のうちどれかを選ぶことになります。

  1. 高齢者の長生きのために、若者は仕事を頑張るべきか
  2. 高齢者を無視して、若者は自分自身の人生を楽しむべきか
  3. 高齢者も若者も、どちらもどちらのために我慢すべきか

1 つ目に対応するのが賛成派(メリット篇)── 社会保障を厚くし、若者は働いてそれを支えるという立場です。

2 つ目に対応するのが反対派(デメリット篇)── 社会保障の目標額を下げ、若者は自分の人生を優先する立場です。

3 つ目に当たるのがまとめ篇 ── どちらに振り切るのでもなく、両側が少しずつ譲り合う中間の道です。

二面性の核心にある問い

連載全体で行き来する核心の問いはこれです。

長生きと現在の自由、どちらを優先する社会で生きたいのか。そしてその選択を、誰が決めているのか。

賛成派は「社会全体で高齢者を支える ── それが豊かな社会だ」と前提を置きます。 反対派は「個人の人生は個人のもの ── 高齢者の生活水準を国が保証する義務はない」と前提を置きます。

このどちらが「正しい」かは、データだけでは決められません。しかしどちらの前提を取るかで、税制・年金制度・労働環境の見え方は大きく変わります。

次の 2 回では、賛成派の世界と反対派の世界を、それぞれ独立した記事として書きます。


→ 次の 2/4: メリット篇 ── 高齢者を支える、働く若者の社会