都会居住と地域活性の二面性 ── デメリット篇
都会は人を孤独にし、地方を空洞化させる。未婚率、待機児童、犯罪、震災予測、自殺、孤独死、食料自給率 1% ── 都会居住の代償を、データと共に描く。
連載 3/4。2/4 メリット篇 の続きです。
「都会は人を孤独にし、地方を空洞化させ、結婚や子育てを難しくする」── この前提から見ると、都会居住 には深刻なデメリットがあります。
都会は大学があって仕事があって新たな人生として憧れを持って地方から来る人が多いかもしれませんが、そういう方のほうが 理想と現実とのギャップに直面した のではないでしょうか。始めから都会に住んでいる人は、逆に 慣れてしまって悪いところがどこなのか分からなくなっている かもしれません。
ここでは、厳しい都会=ビル群に頑張って適応する人の視点から、データを見ていきます。
結婚と子育てがしづらい都会

出典: 都道府県ランキング!女性の生涯未婚率
早く結婚したい人にとって、東京は条件のいい場所ではない とされます。生涯未婚率は都市圏で高くなる傾向にあります。

出典: 保育所入所待機児童数ランキング
子育てもしづらい。待機児童は都市圏に集中 していて、保育園に入れないために共働きが難しくなる家庭が後を絶ちません。
背景篇 で示した「若年女性が消える地方」と、ここで見る「結婚・子育てしにくい都会」は、表裏一体の構造です。地方から若い世代が都会に出て、都会で子どもが増えにくく、結果として国全体の人口が減っていきます。
犯罪、震災、自殺 ── 命に近いリスクが高い

出典: 重要犯罪認知件数ランキング
大阪や福岡、東京など 都会は犯罪が身近 です。人口の母数が大きい以上、絶対数として事件に巻き込まれる可能性も上がります。

出典: 首都直下地震の被害想定(内閣府)
起きてもおかしくないと言われる 首都直下型地震 では、多くの人が犠牲になるという予測があります。同じ地震が地方を襲っても、人口密度の差ぶんだけ犠牲は少なくて済みます。

出典: 死亡者 1 千人あたりの自殺者数ランキング
割合では沖縄が一位ですが、関東圏の自殺者数も多い。それぐらい厳しい環境であるとされます。

出典: 東京 23 区内で自宅で死亡した 65 歳以上一人暮らしの者
東京での孤独死は年々増えている とされます。選択肢の多さの裏には、誰にも気付かれずに死を迎える人の増加があります。
高い物価と、見えない食糧依存

出典: 都道府県庁所在市別 平成 25 年(2013 年)平均消費者物価地域差指数
メリット篇 で見たように、他の地域より年収は高い傾向にあります。しかし 物価も高い。年収が高くなければ、都会の経済状況はむしろ厳しくなります。

出典: カロリーベースの都道府県別食料自給率
そして見落とされがちなのが食糧の話です。東京の食糧自給率はわずか 1%。地方が崩れたら東京も崩れる、というほど一方的な依存関係になっています。

出典: 世界の水資源問題とは?

出典: 牛丼店の都道府県ランキング(平成 27 年)
例えば牛丼を食べれば食べるほど、世界の水問題の原因をつくる とされます。牛肉はほとんどが輸入で、店舗が多い地域ほど消費されている証拠です。都会の便利な食生活は、地方や海外の資源を吸い上げて成り立っています。
テロのリスクと、幸福度の意外な事実

出典: 2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会関係予算
2020 年の東京オリンピックでは、テロ対策に多くの予算が組まれる ほど懸念されているとされます。国際的に注目される都市であるほど、攻撃の標的にもなりやすいというトレードオフがあります。

出典: 地域間経済格差について。実質賃金・幸福度。
そして最後の 1 枚が決定的です。必ずしも都会の幸福度が高いわけではなく、むしろ島根や長野、大分などで十分に高い幸福度が表れている とされます。経験してみないと分からないかもしれませんが、収入や選択肢の多さは幸福度と完全には連動しません。
反対派のまとめ
「都会は人を孤独にし、地方を空洞化させる」という前提に立つなら、都会居住のデメリットは深刻に映ります。
- 結婚しづらく、子育てしづらい
- 犯罪・震災・自殺・孤独死のリスクが集中している
- 物価が高く、年収の高さがそのまま豊かさにならない
- 食糧自給率 1%、地方が崩れれば都会も崩れる依存関係
- テロの標的にもなりやすい
- それでいて、幸福度は地方の方が高い場合がある
注意したいのは、これらはあくまで 東京という場所に原因があるのではなく、東京に集まる人たちが結果的にこれらの状態を作ってしまっている ということです。もし他の道府県が同じように人が集まったら、同じ状態になりやすいでしょう。
また、もう一つ注意したいのは、東京にいる人たち全員がこれらの状態を作っているわけではない ということです。しかしそう考えると今度は「では自分のせいではない」と原因のある人が現実逃避しがちです。自分に原因がなくても、注意したり議論したりしない自分にも、こういう東京にしていることに少なからず自覚を持ちたい ところです。
都会肯定派と都会懐疑派、それぞれが見ている世界はまったく違います。しかし、その どちらも捨てない道 はあり得るのでしょうか。
→ 次の 4/4: まとめ篇 ── 切っても切り離せない都会と地方の関係 → 連載目次: 1/4 背景篇 ・ 2/4 メリット篇