KUMOism

都会居住と地域活性の二面性 ── まとめ篇

都会か地方かの二択を急ぐ前に、第 3 の道を考える。人口推移、外国人労働者、訪日観光客、特区・地域差別化・社会問題博物館まで整理する最終回。

背景篇メリット篇デメリット篇 と読み進めていただいた最終回です。最後に、都会肯定派と都会懐疑派の中間、そしてその限界についてまとめます。

なぜここまで一極集中するのか ── 構造を俯瞰する

なんだかこうやって俯瞰してみると、消費の幸せを望んで都会に出たら、孤独になったり結婚したくなくなったり子育てしづらくなったりして、人口減に繋がりやすい構造 になっています。

第7回人口移動調査(U・Iターン)

出典: 第 7 回人口移動調査

第7回人口移動調査(年代別の移動傾向)

出典: 第 7 回人口移動調査

実際、何人かは都会に来てから地方に戻るようです。一方通行ではないものの、戻る流れは都会へ流れ込む量に対しては小さいまま、というのが現状とされます。

人口減少は本当に問題なのか ── 明治以来の長い視点

よく地方都会含め「人口が減少すると問題」という考え方に陥りがちですが、明治時代からの人口推移をみてみると、いかに今が特別なのかが分かります

1800年後半は3000万人ほどだった

1800 年後半の日本の人口は 3,000 万人ほど。今の 4 分の 1 です。逆に言えば、今が歴史的に異常に多い時期である、という見方もできます。

出生数と死亡数の推移と予測

出典: ピークが迫る日本の人口

出生数と死亡数のグラフを見ると、今後は戦後よりも死亡数が増える ことが予測されています。減少のスピードと規模を直視する必要があります。

短期的な痛みは「高齢化率」

ただ、人口が減少しても短期的に厳しいのは高齢化率が高くなることでしょう。税収が厳しくなって公共サービスの運営が難しくなるのが目に見えるので、公共サービスの縮小から高齢者向けの公共サービスの質維持へ とシフトする可能性があります。

秋田県の高齢化率(2014年)

出典: 平成 27 年版高齢社会白書

秋田県の高齢化率(2040年予測)

出典: 平成 27 年版高齢社会白書

秋田県の高齢化率は現在 32%、2040 年には 43% になると予測されています。地方で先に起きていることは、いずれ全国でも起きうるとされます。

長生きに関する意識調査

出典: 長生きに関する意識調査(東京海上日動あんしん生命保険株式会社)

長生きしたい人たちもそれなりにいます。寿命が延びることそのものは肯定されている一方で、それを支える側の人手は減っていく ── ここに最も大きな構造的ねじれがあります。

つまるところ、労働者が足りない

つまるところ労働者が足りないわけです。国民全体として賛成しているわけではないにしろ、一方で外国人労働者が増えつつあります。

外国人労働者数の推移

出典: 外国人労働者数の推移

外国人労働者数は 上昇傾向 にあります。労働人口を埋めるための実務的な選択肢として、すでに動き出しています。

訪日外国人観光客数の推移

出典: 2015 年訪日外国人観光客数は 1,973 万 7 千人! インバウンド統計値と推移まとめ

また訪日観光客もどんどん増えており、少なからず消費税の税収に貢献していると考えられます。「人が減るから縮む」だけではなく、「外から人を呼んで支える」道も実際に伸びています。

第 3 の道 ── 経済成長以外の目的に切り替える

このような状況ですが、未来の選択肢はたくさんあります。まず思い浮かぶのは、以下の対比です。

これらの価値観は、結局のところ 経済成長をしたいかしたくないか に分かれます。

しかしもちろん、これだけが未来ではありません。経済成長以外の別の目的に向かう という発想に変えることも、一つの選択肢です。ではどのように変えるのか。例えばこんな道があります。

これらの発想転換は極端かもしれません。しかし極端だと思うのは、既存の「経済成長の是非」という価値観に縛られているからだとも言えます。

このように日本全体、もしくは都道府県別に 世界のどこに行っても同じ場所が存在しない価値ある場所 にする ── そう考えることもできるわけです。

第 3 の道の限界 ── 「日本」という枠そのものに縛られている

そもそも立地上「日本」という概念が長く、さらに国民国家という制度ができて民族性も高くなっています。しかし、そういった制度や地形から発想が制限される こともあります。

都会か地方か、経済成長を取るか取らないか、移民を入れるか入れないか ── これらの選択肢自体が、すでに「日本という枠の中で考える」という前提の上に乗っかっています。その枠そのものを問い直すかどうかで、見える未来は大きく変わります。

最後の問い

都会は本当に地方より魅力的なのか。それとも、その代償を引き受けてまで住むだけの価値があるのか。あなたはどちらの前提に立ちますか。そしてその前提が崩れたとき、何を選び直しますか。

「都会に出る/地方に残る」「集中させる/分散させる」の二択を急ぐ前に、まずこの 都会居住と地域活性の二面性 を行き来してみる ── そのこと自体が、kumoism がこの連載でやりたかったことです。

さて今後の日本は、地方も都会も含めてどうなっていくのでしょうか。


連載をはじめから:

→ 1/4 背景篇 → 2/4 メリット篇 ── 大都会で消費する幸せ → 3/4 デメリット篇 ── 都会に住むことで失うもの