都会居住と地域活性の二面性 ── 背景篇
人口減少と地方創生が叫ばれる一方、若者の都会一極集中は止まらない。人口・税収・GDP・将来推計のデータで、都会と地方の現状を整理する 4 部連載の序章。
これは特定の立場を支持・非難する目的ではなく、都会居住を選ぶ側と地域に残る/戻る側それぞれの論理と倫理を独立した記事として描き、両側の視点を提示するための作品です。
ずっと前から各地域の人口減少・少子高齢化が問題視され、最近では外国人観光客の増加や地域移住、地方創生政策をきっかけにして地域活性化が盛り上がっています。
しかし本当に地域を盛り上げたら改善するのでしょうか。改善される部分もありますが、そもそも大きな問題は 若者の都会への一極集中 です。若者は都会に何を想い、何を目指し、移住するのでしょうか。今回はその 都会居住と地域活性の二面性 を 4 回に分けて見ていきます。
どこに人が住んでいるか ── 都道府県別の人口と税収
まずは「どこに人が住み、どこにお金が集まっているか」を見ていきます。

出典: 総務省統計局 第2章 人口・世帯
都道府県別人口では 東京が圧倒的に多い ことが分かります。続く神奈川・大阪・愛知も含めて、上位の都市圏に人口が集中している構図です。

出典: 総務省統計局 第2章 人口・世帯
人口の 増減率はほとんどの地域でマイナス です。プラスを維持しているのは東京近辺と沖縄などごく一部に限られます。

出典: 東京都の人口推移(東京都)
東京でも将来の人口増減率はマイナスになる予測ですが、それでも 1,000 万人以上 の規模を維持するとされます。減るとはいえ、絶対値の優位は当面続くと考えられています。

出典: 税収等(県・市町村分)都道府県別比較グラフ、人口一人あたりの税収等
税収を見ると、東京都の税収は他県を大きく引き離して圧倒的 です。人口集中はそのまま税収集中につながります。

出典: 県内総生産額ランキング
県内総生産でも東京が 1 位です。人口・税収・GDP の 3 つを並べると、いかに東京が経済的にも突出した存在かが見えてきます。
地方は本当に「消える」のか ── 若年女性の将来推計
地方の人口減少を象徴するのが、若年女性の将来推計人口です。

出典: 全国市区町村別「20〜39 歳女性」の将来推計人口
一番濃い色で塗られた地域は、「人口移動が収束しない場合において、2040 年に若年女性が 50% 以上減少し、人口が 1 万人未満の市区町村」を表します。いわゆる「消滅可能性都市」の議論の元になった図です。
子どもを産める年代の女性が地域から消えれば、その地域の自然減はさらに加速します。これは将来の話ではなく、すでに今の人の動きの延長線上にある推計です。
なぜ人は故郷を離れるのか ── 上京の理由と上京後のショック

出典: 故郷を離れた理由ランキング
故郷を離れた理由を見ると、就職・進学・結婚 が大きな原因として並びます。仕事も学校もパートナーも、若者にとっての選択肢は都会に集中しています。

出典: 地方出身者に聞いた!「上京して驚いたこと」ランキング
一方で、上京した人にとって 満員電車はかなりショック とされます。憧れて出てきた都会でも、地方では経験しなかった負荷に直面することは少なくありません。
日本だけの話ではない ── 世界の都市化

出典: 都市化率上昇策が経済を活性化させる(みずほ総合研究所)
世界に目を転じても 都市への人口集中 は進んでいます。これは日本特有の現象ではなく、産業構造の変化が世界規模で人の住む場所を都会側に寄せている、と考えられます。
二面性の核心にある問い
連載全体で行き来する核心の問いはこれです。
都会に住むことは、本当に地方より魅力的なのか。それとも、その代償を引き受けてまで住むだけの価値があるのか。
都会肯定派は「消費の幸せ・選択肢の多さ・チャンスは都会にしかない」と前提を置きます。 都会懐疑派は「都会は人を孤独にし、地方を空洞化させ、結婚や子育てを難しくする」と前提を置きます。
整理すると、私たちがとりうる立場は大きく次の 3 つに集約されます。
- 都会に出て消費の幸せを最大化する
- 地方に残る/戻って、都会とは違う豊かさを選ぶ
- 都会と地方の役割を見直し、地域別に差別化された価値ある場所を作る
1 つ目に対応するのが賛成派(メリット篇)、2 つ目に対応するのが反対派(デメリット篇)、3 つ目に当たるのがまとめ篇で扱う中間の道です。
このどちらが「正しい」かは、データだけでは決められません。しかしどちらの前提を取るかで、地域活性化や移住政策の見え方は大きく変わります。
次の 2 回では、賛成派の世界と反対派の世界を、それぞれ独立した記事として書きます。
→ 次の 2/4: メリット篇 ── 大都会で消費する幸せ